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質問(簡単に教えてもらおうとする相手にイライラするようになった) あなたのおっしゃる「質問されるとイライラする感じ」はよく理解できますし、同じように感じる人はたいへん多いと思います。(続く) #結城浩に聞いてみよう ask.hyuki.net/q/202206131653…
27 replies and sub-replies as of Jun 14 2022

お手軽に答えを求めてくる相手にイライラするようになる変化が突然くるかどうかは人によるかと思いますが、いままでは喜んで教えていたのに、あるときからふと「自分は苦労して学んだのに、この人はどうして簡単に答えを手に入れようとするのか」と変化するのも理解できます。
私自身もそのように感じる(感じた)時期があり、あなたと同じように驚き怪しんだものです。自分自身にイライラする感じも同じかもしれません。
私自身はどう考えたかというと「このように人に教えることを惜しむ気持ち」をどう扱うかは、私の知的生活において重要な意味を持ちそうだ。そんなふうに思いました。教えることを惜しむ気持ちは自分をいらつかせるし、そのような揺れ動く心のままでは落ち着いて考えることが難しいと思ったからです。
あくまで私の話ですが、教えることを惜しむ気持ちを深掘りしていくと、どうやら、私は「もう新しいことを学べない。生み出せない。考えられない。進歩が遅くなっている」という不安を抱いていたようです。それゆえに、すでに手に入れたものを大事なものとして抱え込もうとしているのです。
自分は苦労して手に入れた。それを簡単に人に渡してしまったら、自分の分が目減りしてしまうし、他の人は自分よりも簡単に先へ行ってしまう。そんなバカを見るのはいやだ……そういう気持ちが、奥深くにあるという意味です。あなたがそうだと言ってるわけじゃありませんよ。私の話です。
それで、そのような発想というか不安に対する自分なりの落としどころを考えたいと思いました。何しろ落ち着きませんからね。
私が考えたのは「もっとも良いところを人にあげてしまおう」という発想でした。つまり、抱え込むことの真逆ですね。そういう大盤振る舞いを心がけることで、私はイライラを大逆転することができると思いました。
私は自分の不安にイライラし、けちくさい根性にイライラし、そんなイライラをどうしようもできない無力な自分にイライラするというイライラの冪乗みたいな状態になっていたわけですが、「もっとも良いところを人にあげてしまおう」と考えることですべてをひっくり返すことができました。
「もっとも良いところを人にあげる」というのはいかにももったいないことのようですが、実は違います。本当に深い、本当に大事な部分というのは、人に渡すことができないものなのです。自分が何を考えて、どんなふうに調べたか、どれだけ時間を使ったか、そのプロセス自体に価値があるからです。
さらに私が実感として得たのは、もっとも良いものを人にあげると、自分の身が軽くなり、新しいものがどんどん内側から湧き上がってくる感覚です。ちょうど、水をくみ出せばくみ出すほど、新たな泉が湧き出すような感覚です。
もっというなら、人によいものを教えたり、人によいものを伝えたりする態度というのは、はたから見てわかるものです。そして、そういう態度を応援してくださる人がまわりに集まるようになりました。
そして、何かというと、私に対して良いものがまわりからやってくるようになりました。
少ししか種をまかないと、少ししか刈り取ることができません。でも、周りにどんどん良いものの種をまくならば、想像以上に大きな刈り取りができる。私はそのように思っていますし、実際そのようになっています。感謝なことですね。
結城は、1998年ごろに書いた「文章を書く心がけ」という文章の中に「惜しげなく人に与えよう」ということを書いています。これはいまの連ツイと同じ話題です。 hyuki.com/writing/writin…
"惜しげなく人に伝えよう。 惜しげなく人に与えよう。 最も良いものを人に与えてしまおう。 そうすれば、もっと良いものが必ずやってくる。 表現を惜しんだり、伝えるのを惜しむと、 アイディアも表現もどんどんしぼんでしまうもの。" hyuki.com/writing/writin…
以上、あなたの場合に当てはまるかどうかわかりませんが、私の経験(と対処法)は以上です。何かの参考になれば幸いです。
ちなみにこの「最も良いものを相手にあげましょう」というのは、慣れるまではすごくおっかないものです。そんなことをしたら、自分がなくなってしまうのではないかという恐れがやってくるからです。でも、そんなことはありません。
そして、この「おっかない感覚」というのは一種の「参入障壁」になっているなとも思いました。ここを飛び越えるかどうかで、世界の広がりが大きく変わるからです。
さらに付け加えるなら「最も良いものを相手にやってしまう」という行動は、自分の学び方も変えます。つまり、人にやってしまったらそれで終わりになるような表面的な知識を自分の中に蓄えることで満足しなくなるからです(伝われ)。
自分が持っている最も良いものをどんどん周りに大盤振る舞いしても、ちゃんと自分の中には残るものがある。そしてその残るものは伝えたくても伝えられないもの、他の人が奪いたくても奪えないものなのです。
私からの回答は以上です。ご質問ありがとうございました。
ご質問をいただいたおかげで、今回の連ツイを書くことができました。感謝です。この連ツイもまた加筆修正して結城メルマガの読み物にまとめたいです。 自分らしく生きる道を探していくために。楽しく読めて元気が出る「結城メルマガ」は毎週火曜日配信。登録初月は無料です。
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mm.hyuki.net
質問者さんから御礼をいただきました。
質問(御礼) こちらこそ、あなたからのご質問のおかげで考えていたことをたくさん言語化できました。感謝です。ツイートへの反響が大きいのは、あなたと同じように感じる人がたくさんいるからだと思います。お互いに頑張りましょう!😊 #結城浩に聞いてみよう ask.hyuki.net/q/202206140826…
情報は発信する人の元に多く集まる。 何かを学んだらそれを必ず他人に教えその人とが理解できる事が自分の理解の卒業と思っています。 ですから教える事は自分の本質的な理解の力になり多くの例えばなしを生み出すと思っています。 そうする事で次の新しいものへチャレンジします。先生と同じですね。